1. 総平均法と移動平均法の違い
暗号資産を売ったときの所得は「売却価額 −(譲渡原価 + 売却手数料など)」で、譲渡原価を出すには「年末の1単位当たりの取得価額」(いわゆる平均取得単価)が必要です。国税庁FAQ 問2-4は、その出し方を2つ定めています(総平均法または移動平均法(届出がなければ総平均法))。
| 総平均法 | 移動平均法 | |
|---|---|---|
| 単価の出し方 | 年初に保有する暗号資産の評価額と、その年に取得した暗号資産の取得価額の総額との合計額を、これらの総量で割った額が年末の1単位当たりの取得価額 | 取得のたびに、保有する暗号資産の簿価の総額を保有数量で割って平均単価を出し直し、12月31日に最も近い日に出した平均単価が年末の1単位当たりの取得価額 |
| 単価が決まる時点 | 年末(その年の購入がすべて終わってから) | 買うたび(売っても単価は変わらない) |
| 使う条件 | 届出がなければこの方法 | 評価方法の届出が必要 |
| 国税庁の計算書 | 総平均法用(Excel) | 移動平均法用(Excel) |
| FAQの設例の譲渡原価 | 3,106,000円 | 3,080,200円 |
総平均法:年末の単価 =(年初の評価額 + その年の購入額の合計)÷(年初の数量 + その年の購入数量)
移動平均法:買うたびに 平均単価 = 保有分の簿価の合計 ÷ 保有数量
取得価額(購入1回)= 購入の代価 + 購入手数料
譲渡原価(1年)= 年初の評価額 + その年の購入額 − 年末の評価額(年末の単価 × 年末の数量)
所得金額 = 売却価額の合計 −(譲渡原価 + 売却手数料)
- 年初の評価額
- 前年末の単価×前年末の数量(初めての年は0)。このツールでは「前年からの繰越」に入れる
- 簿価
- 移動平均法で持っている分の取得価額の合計。売ると 単価×残り数量(1円未満切り上げ)に減る
- 売却価額
- 売って受け取った円。暗号資産と交換したときは、受け取った暗号資産のその時の円の価額
国税庁の方法では、暗号資産の種類(ビットコインなどの名称)ごとに計算します。BTCとETHを持っているなら、BTCだけの取引でこのツールを1回、ETHだけでもう1回使ってください。
2. 計算例:国税庁FAQ 問2-4の設例
計算ツールの初期値は、国税庁FAQ 問2-4の設例そのままです(3月1日・6月20日・7月10日・9月15日・11月30日の5回の取引、手数料は考えない。FAQに年の記載はないので、ツールでは2025年としています)。
| 日付 | 取引 | 数量 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 3月1日 | 購入 | 4 BTC | 1,845,000円 |
| 6月20日 | 購入 | 2 BTC | 1,650,000円 |
| 7月10日 | 売却 | 2 BTC | 2,400,000円 |
| 9月15日 | 購入 | 0.5 BTC | 542,800円 |
| 11月30日 | 売却 | 3 BTC | 2,895,000円 |
総平均法
その年に買ったのは6.5BTCで、購入額の合計は4,037,800円。年末の単価は4,037,800円 ÷ 6.5BTC = 621,200円、年末に残る1.5BTCの評価額は931,800円です。譲渡原価は4,037,800円 − 931,800円 = 3,106,000円。7月の売却も11月の売却も、同じ621,200円で原価を計算します。
移動平均法
平均単価は461,250円(3月1日)→582,500円(6月20日)→638,400円(9月15日)と、買うたびに平均単価を出し直します。7月10日に2BTCを売ったときの原価は、その時点の単価で1,165,000円。年末の単価は最後に買った9月15日の638,400円で、年末の評価額は957,600円、譲渡原価は4,037,800円 − 957,600円 = 3,080,200円です。
所得金額
売却価額の合計は5,295,000円なので、所得金額は総平均法で2,189,000円(国税庁FAQ 問2-8の計算書の例と同じ:収入金額計5,295,000円・必要経費計3,106,000円で、所得金額2,189,000円)、移動平均法で2,214,800円です。この例では、値上がりの途中で売った7月の原価が移動平均法のほうが低いため、移動平均法の所得が25,800円多くなりました。
3. 手数料の扱い(購入は取得価額、売却は必要経費)
- 購入の手数料:取得価額は購入の代価に購入手数料などの費用を加算した金額(FAQ 1-5)。国税庁の例では、2BTCを2,000,000円で買って手数料550円を払うと、取得価額は2,000,550円(1BTCあたり1,000,275円)です。ツールでは購入の行の「手数料」に入れます。
- 売却の手数料:必要経費になるのは、売った暗号資産の譲渡原価と、売却の際に支払った手数料など(FAQ 2-3)。取得価額ではなく、その年の必要経費に足します。たとえば設例の11月30日の売却に3,000円の手数料がかかったとすると、総平均法の所得金額は2,189,000円から2,186,000円になります(必要経費3,109,000円)。
- スプレッド:販売所の売値と買値の差(スプレッド)は手数料として請求されるものではなく、約定した金額にすでに含まれています。約定金額をそのまま入れれば足ります。
4. 移動平均法を使うには届出が必要
評価方法は総平均法または移動平均法(届出がなければ総平均法)です。移動平均法を使うには、「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」(様式名は所得税の(有価証券・暗号資産)の評価方法の届出書)を、その種類の暗号資産を初めて取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長へ出します(e-Taxか書面。国税庁A1-20 所得税の暗号資産の評価方法の届出手続)。評価方法は暗号資産の種類ごとに選びます。前年以前に同じ種類を取得していれば届出の対象ではなく(届出がなければ総平均法のまま)、変える場合は「変更承認申請書」になります。
すでに総平均法で計算している(届出をしていない場合を含む)方法を変えるときは、変更しようとする年の3月15日までに「変更承認申請書」を出して承認を受ける必要があり、前の方法を採用してから相当期間(特別の理由がなければ3年)を経ていないと却下される場合があります(FAQ 問2-6)。このツールで両方の結果を見比べても、使えるのは届け出た方法(届出がなければ総平均法)だけです。
5. DEX・海外取引所の取引は取引ごとに円に換算
国内の取引所なら年間取引報告書に円の金額が載りますが、DEXや海外の取引所、ウォレットでのスワップには円の記録がありません。取引ごとに、その時点の円の価額に直して入力します。
- 暗号資産同士の交換:国税庁FAQ 問1-3では、暗号資産Aを暗号資産Bと交換すると「暗号資産Aで暗号資産Bを購入した」ことになり、Aの譲渡価額は取引時の交換レートで円に換算したBの価額(例:1XRP=30,000円×40XRP)とされています。ツールには「手放した暗号資産の売却」と「受け取った暗号資産の購入」を、それぞれの暗号資産の計算で1行ずつ入れます。USDCで買った・売った場合も、そのときの円の価額で入れます。
- 使うレート:国税庁FAQには、交換時の時価をどの取引所・どのサイトのレートで計算するかを定めた問はない。国内業者の年間取引報告書について、FAQ 問2-9に「暗号資産の売却・購入などを外貨で行った場合には、取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円に換算した金額に基づき、各事項が記載されています」という注記があります。取引ごとに日時・使ったレート・出典を記録し、同じ考え方で通してください(当サイトの提案で、国税庁の指定ではありません)。USDC建ての金額の円換算はUSDT・USDC→日本円 換算ツールでも確認できます。
- 先物・証拠金取引:ハイパーリキッドなどの無期限先物は差金決済で、現物の取得価額の計算には入りません。損益(とファンディング)は別に集計し、国税庁の計算書では「信用・証拠金」の欄に入れます。暗号資産の証拠金取引(レバレッジ取引)は申告分離の対象外で総合課税です。詳しくは仮想通貨FX・先物の税金とDEX・ハイパーリキッドの税金と確定申告を見てください。
6. 年をまたぐとき(繰越)
年末に残った分は、年末の単価×数量(評価額)で翌年に引き継ぎます。設例の年末は1.5BTCで、翌年の年初の評価額は総平均法なら931,800円(621,200円×1.5)、移動平均法なら957,600円(638,400円×1.5)です。複数年の取引をまとめて入れると、ツールが年ごとに区切ってこの繰越を自動で計算します。前年以前の取引を入れない場合は、「前年からの繰越」に前年末の数量と評価額を入れてください。
同じ取引でも方法によって年ごとの所得は変わりますが、全部売り切れば合計は(端数を除いて)同じになります。設例の翌年3月に残りの1.5BTCを1,000,000円で売ったとすると、その年の所得は総平均法68,200円・移動平均法42,400円で、2年分の合計はどちらも2,257,200円です(1,000,000円は説明用の数字)。
7. 取引が多いとき:CSVと国税庁の計算書
このツールは1つの暗号資産につき40行までで、取引履歴のCSVは読み込みません(入力はブラウザの外に出ません)。取引が多い場合は次のどちらかです。
- 損益計算サービス:取引所やDEXの履歴CSVを読み込み、総平均法・移動平均法で計算してくれます。ハイパーリキッド・ライターなどDEXへの対応と料金は仮想通貨の損益計算ツール比較にまとめています。ハイパーリキッドの履歴の出し方は取引履歴CSVの出力方法です。
- 国税庁の「暗号資産の計算書」:総平均法用・移動平均法用のExcelがあり、移動平均法用は1枚に27行の取引を入れられます。入力例は国税庁「暗号資産の計算書」の書き方を見てください。このツールの端数処理(収入金額は切り捨て、必要経費は切り上げ、移動平均法の売却後の残高は切り上げ)は計算書と同じです。
計算した所得金額にかかる税額の目安は仮想通貨の税金計算シミュレーションで、損失が出た年の扱いは仮想通貨の損益通算と損失の確定申告で確認できます。ステーキング報酬やエアドロップで受け取った暗号資産は、受け取ったときの時価が取得価額になります(ステーキング・エアドロップの税金)。
8. 注意点と税制改正
- 計算は国税庁FAQ(令和7年12月最終改訂)の問2-4の方法によります。1つの計算に入れるのは同じ種類の暗号資産だけにしてください。
- 同じ日の取引は入力した順に処理します(購入を先に入れると、その日の売却に使えます)。売却がその時点の保有数量を超えると、計算できないと表示します。
- 入力した取引はブラウザの中だけで計算し、サーバーにも分析ツールにも送りません。「この結果のリンクをコピー」で作るリンクには入力した取引の数字が入るので、共有する相手に注意してください。
- 税制改正:令和8年度税制改正(所得税法等改正法は2026年3月31日成立・公布)で、国内の登録業者(暗号資産取引業者)に対する特定暗号資産の譲渡等は20%(所得税15%・住民税5%、ほかに復興特別所得税)の申告分離課税になります。適用は改正金商法の施行日の属する年の翌年1月1日からで、改正金商法(2026年7月15日成立)の施行日は公布から1年以内の政令で定める日(2026年9月29日時点で未定)です(2027年中に施行されれば2028年1月1日から)。DEXや海外業者での取引は条文上この対象に当たらず、総合課税のままと読めます。 改正後の分離課税の対象になる取引でも取得価額の計算方法がどう扱われるかは、2026年10月6日時点で国税庁の暗号資産のページ(令和7年12月最終改訂版)に載っていません。DEXや海外業者での取引の扱いは分離課税はいつから?を見てください。
税務上の助言ではありません。計算結果は入力に基づく目安です。個別の取引の扱いや評価方法の選択は、税務署または税理士に確認してください。記載は2026年10月6日に確認した国税庁FAQ(令和7年12月最終改訂)、届出手続のページ、暗号資産の計算書に基づきます。
出典(公式ページと確認日)
国税庁暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)・暗号資産の計算書、A1-20 所得税の暗号資産の評価方法の届出手続。
- app.hyperliquid.xyz/referrals (2026年10月19日確認)
- help.fomo.family/en/articles/15171587-can-i-import-an-existing-wallet-into-fomo (2026年10月19日確認)
- hyperliquid.gitbook.io/hyperliquid-docs/referrals (2026年10月1日確認・2項目)
- nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf (2026年9月29日確認・16項目)
- nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm (2026年9月29日確認)
- nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/xlsx/001.xlsx (2026年10月6日確認)
- nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/xlsx/002.xlsx (2026年9月29日確認)
- nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/21kasou.htm (2026年10月6日確認)