DEXの清算連鎖(清算カスケード)を防ぐ方法

結論。清算の連鎖(清算カスケード)とは、「価格下落 → レバレッジ取引のロングが清算 → 強制決済の成行売りでさらに下落 → 次の層が清算」という悪循環です。巻き込まれないための習慣は4つ。実効レバレッジを低く(3〜5倍以下)、投機的なポジションは分離(Isolated)マージン、清算価格までの距離の半分より手前に損切り、そして追加できる予備の証拠金を持っておくことです。ハイパーリキッドでは、マーク価格で見た口座の評価額が維持証拠金(BTC 1.25%、ETH 2%)を下回ると清算が始まり、10倍のBTCロングなら約8.9%の下落で清算されます。

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1. 清算の連鎖とは:市場全体と、自分の口座の中

無期限先物のポジションは、担保が取引所の維持証拠金を満たせなくなると清算されます。取引所はたいてい成行注文でそのポジションを決済します。その強制決済の注文が価格を動かし、次のグループのポジションを維持証拠金割れに追い込み、その強制注文がまた価格を動かす……これが清算の連鎖(カスケード)です。ロングは下方向に、ショートは上方向(踏み上げ、ショートスクイーズ)に連鎖します。レバレッジをかけたポジションが積み上がっていない価格帯に着くか、本物の買い手(売り手)が流れを吸収したところで止まります。

身を守るべき連鎖は、実は2種類あります。

  • 市場全体の連鎖。自分では止められませんが、自分の清算価格を連鎖が掃除する範囲の外に置くことはできます。清算が溜まっている価格帯は、清算マップで事前に見えます(10章)。
  • 自分の口座の中の連鎖。クロスマージンではすべてのポジションが1つの残高を共有します。1つのポジションの損失がほかのすべての証拠金を削るので、1回の失敗で口座全体が清算され得ます。こちらは設定で完全に防げます(6章)。

2. 「強制ロスカット」と「清算」の違い

国内の取引所やFX会社では、証拠金維持率が一定の水準を下回ったときに行われる強制決済を「ロスカット(強制ロスカット)」と呼ぶのが一般的です。DEXの無期限先物では、同じ役割の仕組みを英語のまま「清算(Liquidation)」と呼びます。やっていることは同じで、損失が証拠金を食い尽くす前に取引所がポジションを閉じる安全装置です。

違うのはレバレッジの大きさです。国内の登録業者では、個人の暗号資産の証拠金取引は必要証拠金が取引額の50%、つまりレバレッジ2倍までに制限されていますが(金融商品取引業等に関する内閣府令 第117条)、海外のDEXではハイパーリキッドのBTCで40倍、ジュピターのSOLでは250倍まで選べます(レバレッジ別の必要証拠金の計算)。レバレッジが大きいほど清算までの値幅は狭く、連鎖に巻き込まれやすくなります。国内の感覚のまま高レバレッジを使うのが、いちばん危険なパターンです。

3. 実例:2025年10月10日(日本時間11日早朝)

記録上最大の清算イベントは2025年10月10日に起きました。CoinGlassの2025年次レポートとCoinDeskによると、暗号資産市場全体の清算額は約24時間で190億ドル超。ハイパーリキッドは状態がすべて公開されているため、研究者が秒単位で再現しています。arXivの論文(「Autodeleveraging as Online Learning」、2026年2月)によると、ハイパーリキッドではUTC 21時16分〜21時27分(日本時間10月11日6時16分〜6時27分)のわずか11分間に21億311万ドルが清算され、その間に自動デレバレッジ(ADL)が約16回発動しました。ADLとは、口座がマイナスになった分を埋めるため、反対側で利益が出ているポジションを強制的に決済する最後の手段です。

日本の多くのトレーダーが寝ている時間帯に、11分で終わった出来事です。ここから言えることは2つ。1つ目、スピード。あらかじめ置いた損切りは守ってくれますが、「見ていて対応する」は間に合いません。2つ目、勝っていたトレーダーも影響を受けたこと。ADLは利益の出ているポジションを閉じます。低いレバレッジは、その両方から身を守ります。

4. ハイパーリキッドの清算の流れ

維持証拠金

ハイパーリキッドの維持証拠金は「その銘柄の最大レバレッジで建てたときの初期証拠金の半分」で、40倍銘柄の1.25%から3倍銘柄の16.7%までです。大きなポジションは最大レバレッジの低い証拠金ティアに入り、その分、維持証拠金も上がります。

銘柄最大レバレッジ(証拠金ティア)維持証拠金
BTC40倍(想定元本1.5億ドルまで)1.25%
ETH25倍(1億ドルまで)2%
SOL、XRP20倍(7,000万/4,000万ドルまで)2.5%
HYPE、DOGE、ZEC などの主要アルト10倍(2,000万ドルまで、超えると5倍)5%
最大3倍の小型アルト3倍16.7%

発動の基準:最終約定価格ではなくマーク価格

清算の判定にはマーク価格が使われます。マーク価格は3つの値の中央値で、(1) オラクル価格にハイパーリキッドのプレミアムの移動平均を足したもの、(2) ハイパーリキッド自身の最良買い気配・最良売り気配・最終約定価格の中央値、(3) Binance・OKX・Bybit・Gate・MEXCの先物価格の加重中央値です。オラクル自体も、各バリデーターが3秒ごとに提出するCEX現物価格の加重中央値を、ステーク量で重み付けした中央値です。そのため、ハイパーリキッド上の1回の大口約定だけで清算されることはありませんが、本当の暴落ではマーク価格も市場全体と一緒に下がります。ドキュメントも、ボラティリティが高いときはマーク価格が板の価格と「大きく乖離することがある」と注意しています。急変の前・最中・後の動き方はボラティリティが高い相場の取引方法で解説しています。

清算の手順

  1. 評価額が維持証拠金を下回る。ポジションの成行注文が板に送られます。誰でも反対側で約定でき、清算手数料はありません。
  2. 大きなポジションは分割。10万USDCを超えるポジションは20%だけが送られ、部分清算のあと30秒のクールダウンがあります(その間の清算注文はポジション全量)。
  3. 残った担保は本人のもの。約定で維持証拠金を回復するか、ポジションが閉じれば、ドキュメントの言葉どおり「残りの担保はトレーダーに残る」。
  4. 維持証拠金の3分の2を下回るとバックストップ。板で間に合わず評価額が維持証拠金の2/3を下回ると、HLPの戦略の1つである清算用ボールトがポジションを引き取ります。クロスならすべてのクロスポジションとクロス証拠金が移され、口座残高はゼロになります。分離ならそのポジションと証拠金だけです。維持証拠金は戻りません。
  5. 評価額がマイナスならADL。反対側のトレーダーを (マーク価格 ÷ 建値)×(建玉 ÷ 口座評価額) の順に並べ、直前のマーク価格でマイナスの口座と相殺決済します。取引所に不良債権は残らず、ポジションを持っていない利用者が損失を負担することはありません。

ハイパーリキッドの「保険基金」は HLP の清算用ボールトです。Binance や Bybit のような CEX は、清算手数料などを原資にした取引所運営の保険基金で、破産価格を超えた損失を埋めます。ハイパーリキッドには独立した保険基金がなく、その役割を誰でも USDC を預けられる HLP の清算用ボールトが担っています。通常の清算に手数料がかからないのはこのためで、バックストップで引き取ったポジションの損益は HLP の預け手に帰属します。清算用ボールトを含むHLPは、2026年9月25日時点で1億8,430万ドル、APR3.83%でした(HLPの仕組み)。

ハイパーリキッドのBTC無期限先物の取引画面と板。清算の成行注文はここで執行される
app.hyperliquid.xyz/trade のBTC無期限先物の板。清算はマーク価格で発動し、ここに成行注文として送られます(10万USDC超のポジションは20%ずつ)。2026年9月撮影。

建玉上限(OIキャップ)と注文拒否のエラー文

連鎖の最中に「決済はできるのに新規で入れない」「損切りが通らない」ことがあります。原因の多くは建玉上限です。BTC・ETH などバリデーター運営の銘柄は上限額を公表しておらず、API の perpsAtOpenInterestCap で「いま上限に達している銘柄」だけが分かります(2026年9月25日13時15分 UTC は8銘柄、うち取引中は SAGA だけ)。上限に当たるのは小型・新規・投機的に買われた銘柄です。trade.xyz などの HIP-3 市場は銘柄別・DEX 全体の上限額が公開されていて、プロトコルは「100万と現在の建玉の半分の大きい方」以上を求めるため、上限を急に下げてポジションを追い出すことはできません。

銘柄最大レバレッジ建玉上限現在の建玉使用率
xyz:SP50050倍12.5億ドル3.54億ドル28%
xyz:GOLD(金)25倍7.5億ドル2.81億ドル37%
xyz:SILVER(銀)25倍5億ドル2.46億ドル49%
xyz:CRCL10倍1.5億ドル8,600万ドル57%
xyz:SOXL10倍5,000万ドル2,950万ドル59%

api.hyperliquid.xyz/info の perpDexLimits と metaAndAssetCtxs(dex "xyz")、2026年9月25日13時30分(UTC)ごろ。xyz 全体の上限は100億ドルで、上限到達の銘柄はありませんでした。

上限に達しても強制決済されるわけではありませんが、買い増しやドテンはできなくなります。アプリは日本語表示がないので、よく出る英語のエラー文を整理しました。

表示される英文意味対処
This order was rejected because it would exceed the open interest cap.建玉上限に達しているため、新規・買い増し(売り増し)はできない決済・縮小のみ、または建玉が減るまで待つ
Limit order too aggressive because OI is capped. Use market orders to close position.上限到達中にオラクルより有利な価格の指値を出した決済は成行で
Order would increase open interest while open interest is capped上限到達中に建玉を増やす注文(ドテンを含む)サイズをポジション以内にし reduce-only に
Order would increase open interest too quickly建玉の増え方が速すぎる時間をおいて小さく分ける
Order price too far from oracle指値がオラクル価格から離れすぎ現在値に近い価格で出し直す
Order would cause position to exceed margin tier limit at current leverage今のレバレッジ設定で持てるサイズを超えるレバレッジを下げるかサイズを減らす

hyperliquid-docs「Error responses」とアプリの表示文言、2026年9月25日。

ポジションより大きいストップ注文(ロング1 BTC に2 BTC の売りストップなど)はドテンで新しい建玉を作るため、上限到達中は拒否されることがあります。損切りはポジションと同じサイズにし、reduce-only を付けておきましょう。最大成行注文(最大レバレッジ25倍以上の銘柄で3,000万ドル、指値はその10倍)や、未約定注文1,000件以上で新しい reduce-only・トリガー注文が拒否される制限もあります。

5. 清算まで何%?計算式と早見表

ハイパーリキッドは清算価格の正確な式を公開しています。

清算価格 = 価格 − side × 利用可能証拠金 ÷ ポジション量 ÷(1 − l × side)

side はロングで1、ショートで−1、l は維持証拠金率、利用可能証拠金 は分離マージンならそのポジションの証拠金、クロスなら口座評価額全体から、必要な維持証拠金を引いたものです。建てたばかりの分離マージンのロングなら、清算までの値幅は次のように簡単になります。

値幅 ≒(1 ÷ レバレッジ − 維持証拠金率)÷(1 − 維持証拠金率)

2026年9月25日08時30分(UTC)のマーク価格(BTC 84,446ドル、ETH 2,693ドル)で計算すると、次のとおりです。

レバレッジBTCロング(維持証拠金1.25%)ETHロング(2%)最大10倍のアルト(5%)
3倍−32.5%(57,010ドル)−32.0%(1,832ドル)−29.8%
5倍−19.0%(68,412ドル)−18.4%(2,198ドル)−15.8%
10倍−8.9%(76,963ドル)−8.2%(2,473ドル)−5.3%
20倍−3.8%(81,239ドル)——
25倍−2.8%−2.0%(2,638ドル)—
40倍−1.3%(83,377ドル)——

分離マージン、建玉直後、手数料と資金調達率を除く。ショートはほぼ同じ幅の上昇で清算されます。実際の清算価格はアプリに表示されます。この表は、なぜそこになるのかを示すものです。

この式から読み取れることは3つです。

  • レバレッジを2倍にすると、余裕は半分以下になる。BTCの10倍は8.9%、20倍はわずか3.8%。維持証拠金という固定コストが、薄いクッションほど大きな割合を占めるからです。
  • クロスマージンでは、レバレッジのスライダーは清算価格を決めない。ドキュメントははっきり「クロスマージンのポジションの実際の清算価格は、設定したレバレッジに依存しない。低いレバレッジのクロスポジションは、単により多くの担保を使うだけ」と書いています。効いてくるのは、口座評価額に対する建玉の合計です。
  • 清算価格は建てた後も動く。資金調達率の支払い、手数料、クロスならほかのポジションの損失で動きます。レバレッジが確認されるのは建玉時だけで、その後は「利用者の責任で監視する」ものとされています。

許容できる損失額から逆算してサイズを決める方法はポジションサイズの決め方と清算価格の計算ツールで、計算ツールは清算マップの記事にあります。

6. クロスと分離:口座の中の連鎖

ハイパーリキッドの初期設定はクロスマージンです。資金効率は良いのですが、自分で自分を連鎖に巻き込む原因の大半もここにあります。口座残高1万ドルで、BTCを5万ドル、ETHを5万ドルロングしている(実効10倍)例で比べます。

  • クロスマージン。維持証拠金は625ドル(5万ドルの1.25%)+1,000ドル(5万ドルの2%)=1,625ドル。損失の合計が8,375ドルを超えると清算されます。両方が同じだけ下がるなら8.4%の下落です。ETHだけが暴落した場合は、ETHが約16.8%下がるまで耐えますが、そこで両方のポジションが清算されます。何も悪くなかったBTCロングまで道連れです。バックストップ清算なら口座残高はゼロになります。
  • 分離マージンで各5,000ドル。BTCは8.9%、ETHは8.2%の下落で清算されます。ETHが暴落しても清算されるのはETHのポジションだけで、BTCのポジションとその5,000ドルは無傷です。

正直なトレードオフはこうです。クロスは残高全体で支えるので1銘柄の大きな値動きには耐えますが、崩れるときはすべてが同時に崩れます。分離は1銘柄の値動きで早めに清算されますが、決して広がりません。投機的なトレードには分離をおすすめします。クロスが意味を持つのは、ポジション同士が本当にヘッジし合っている場合です。ポートフォリオマージン(現物と先物をまとめて証拠金計算する、条件を満たした口座向けの方式)はクロスを一般化したもので、同じ性質を持ちます。いちばん確実な壁はサブアカウントで、アカウント間で証拠金が共有されることはありません。詳しくはハイパーリキッドのクロスと分離マージン、サブアカウントの解説へ。

利益を引き出すときのルールも覚えておきましょう。ポジションを持っている口座から証拠金を減らす操作(出金や振替)では、少なくとも max(初期証拠金, 建玉合計の10%) を残す必要があります。引き出してクッションを薄くしすぎることはできない仕組みです。

分離マージン、マーク価格の損切り、トレーリングストップ

この記事の対策はすべてハイパーリキッドで使えます。ポジションごとのクロス/分離、マーク価格で発動するTP/SL、reduce-only 注文、ネイティブのトレーリングストップ。HOLYGRAIL で最初の2,500万ドルまで全手数料4%オフ。

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7. ハイパーリキッド・ライター・ジュピターの清算ルール比較

ハイパーリキッドライタージュピターPerps(SOL/ETH/wBTC)
発動の基準マーク価格(オラクル+自社の板+CEXの先物価格)マーク価格(インパクト価格・インデックス+プレミアム・CEX価格)オラクル価格
最初の処理ポジション全量の成行注文を板へ。10万ドル超は20%ずつ事前清算(ポジションを減らす取引のみ可)→ 未約定注文の取消と「ゼロ価格」でのIOC注文プロトコルがポジションを決済
手元に残るもの約定後に残った証拠金約定後の残り(ゼロ価格より有利な分から最大1%を保険基金LLPへ)なし(残りの担保はすべてJLPプールへ)
バックストップ維持証拠金の2/3未満でHLPの清算用ボールトが引き取り(維持証拠金は戻らない)クローズアウト証拠金を下回るとLLPが引き取り—
最後の手段利益の出ている反対側ポジションの自動デレバレッジ(ADL)ADLプールが吸収

ライターには便利な「早期警告」の段階があります。評価額が初期証拠金と維持証拠金の間にある口座は事前清算(pre-liquidation)の状態になり、ポジションを減らし、口座の健全性を悪化させない取引しかできません。維持証拠金を下回ると、エンジンは未約定の注文をすべて取り消し、口座の健全性をそれ以上悪化させない「ゼロ価格」でIOC注文を出します。ゼロ価格より有利に約定した場合は、最大1%が保険基金LLPへの手数料になります。クローズアウト証拠金を下回るとLLPがポジションを引き取り、最後はADLです。分離マージンのポジションは別口座として扱われます。一方、ジュピターのプール市場にはこうした段階がなく、清算されると残りの担保はすべて没収され、借入手数料が差し引かれるたびに清算価格が毎時間近づいてきます。比較記事:ハイパーリキッドとジュピター、保険基金とADLの仕組み(4章)、ライターのレビュー。

8. 本当に効く損切りの置き方

連鎖のスピードに間に合う防御は損切り注文だけです。ただし、置き方とサイズが適切な場合に限ります。

  • 損切りは「トレードの前提が崩れる価格」に置き、そこに当たったときの損失が許容額になるようにサイズを決めます。レバレッジは結果であって、最初に決めるものではありません。
  • 損切りは清算価格までの距離の半分より手前に。ハイパーリキッドのTP/SLはマーク価格で発動し、許容スリッページ10%の成行注文として執行されます。連鎖の最中は発動価格よりかなり不利に約定し得るので、清算価格の直前に置いた損切りはほとんど守ってくれません。
  • reduce-only にする。損切りがポジションを反転させたり増やしたりすることがなくなります。
  • わかりやすい価格は避ける。キリ番や直近安値には清算と損切りが集まり、連鎖が加速する場所になります。見えている清算の塊の少し外側に置いた損切りのほうが、塊の中に置くより有利です。
  • 含み益のポジションにはトレーリングストップ。ハイパーリキッドのネイティブのトレーリングストップ(無期限先物のみ)は、指定した戻り幅でマーク価格の最良値を追いかけ、逆戻りしません。
  • ポジションのTP/SLは初期設定でポジション全体が対象。数量を入力した場合は固定で、買い増しても自動では増えません。

画面の操作手順はハイパーリキッドの条件付き注文とトレーリングストップの使い方へ。

9. 資金調達率の急上昇:じわじわ進む清算

ハイパーリキッドの資金調達率は毎時間、証拠金から直接やり取りされ、上限は1時間あたり4%と、多くのCEXよりずっと緩い設定です。主要銘柄ではふだんはごく小さく、金利部分は1時間0.00125%。2026年9月25日までの30日間、BTCの資金調達率は72%の時間でちょうどこの基準値で、最大でも1時間0.00898%でした。過熱したアルトは別です。9月25日08時30分(UTC)にはSTBLの無期限先物が1時間0.0254%、基準の約20倍でした。1日で想定元本の約0.61%、STBLの最大レバレッジ3倍なら証拠金の1日約1.8%です。これが1週間続けば、価格が動かなくても清算までの距離が大きく削られます。持ち越す前には市場のヘッダーで資金調達率を確認しましょう。詳しくは資金調達率(ファンディングレート)の解説と資金調達コストを抑える方法へ。

10. 清算マップとアラート

ハイパーリキッドのポジションはすべて公開されているので、外部サイトが「どこに清算が溜まっているか」を可視化しています。清算マップは、価格ごとに、そこに来たら清算されるロングとショートの量を表示します。清算の塊は連鎖のときに磁石のように働き、最初の塊に届くと、その強制注文が次の塊まで価格を運ぶことがあります。自分の清算価格と損切りを大きな塊から離して置くために使い、また値動きがショートやロングの壁に向かっているかを見るのに使いましょう。

CoinGlassのHyperliquid清算マップ(BTC)。現在値の周辺にロングとショートの清算バー
CoinGlassのHyperliquid清算マップ(BTC):現在値より下にロングの清算バー、上にショートの清算バー、累積の清算レバレッジ曲線(2026年9月撮影)。

読み方、信頼できるデータ元、清算価格の計算ツールはハイパーリキッドの清算マップにまとめています。自分の口座については、証拠金率のモニターや、損切り付近での価格アラートを設定しておくと安心です:証拠金率ヘルスモニター。

11. 日本時間で見た要注意の時間帯

連鎖のきっかけになりやすいのが米国の重要指標です。米労働統計局(BLS)の発表は米東部時間8時30分、FOMCの声明は午後2時です。米国の夏時間は2026年11月1日に終わるので、日本時間は次のようにずれます。

指標2026年10月11月12月
米雇用統計10月2日(金)21:3011月6日(金)22:3012月4日(金)22:30
米CPI10月14日(水)21:3011月10日(火)22:3012月10日(木)22:30
FOMC声明10月29日(木)3:00—12月10日(木)4:00

日本時間。BLSとFederal Reserveの公表日程(docs/FACTS.md、2026年9月25日確認)をもとに換算。FOMCは10月27〜28日、12月8〜9日の会合で、声明は最終日の米東部時間午後2時。

日本のトレーダーにとっての落とし穴は、FOMCの声明が深夜3〜4時であること、そして2025年10月の大連鎖が早朝6時台だったことです。寝ている間に指標や連鎖が来る前提で、就寝前にはレバレッジを落とし、損切りを必ず置いておきましょう。1日の中で出来高と値幅が大きい時間帯は暗号資産の取引時間帯ガイドで実測データを紹介しています。

12. 連鎖の最中にやること

  1. ポジションを「守る」ためにレバレッジを足さない。高レバレッジでのナンピンは、清算価格を市場価格に近づけるだけです(どこまで近づくかはナンピン計算機で確かめられます)。
  2. 固まらずに減らす。一部を決済するのが清算価格を遠ざける最速の方法です。分離マージンなら証拠金の追加、クロスならUSDCの入金・振替も有効です。
  3. 下落途中で約定するとポジションが増える指値注文を取り消す。
  4. スプレッドの拡大と、直前価格から離れた約定を覚悟する。できるだけ指値で手仕舞い、連鎖中の板に成行を出すのは避けます。
  5. 落ち着いたらADLを確認。利益の出ている側にいた場合、ADLでポジションが閉じられている可能性があります。再エントリーの前に取引履歴を確認しましょう。

13. 清算と税金

清算で確定した損失も、無期限先物の損益の一部です。国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月版)によると、暗号資産の証拠金取引は申告分離課税の対象外で雑所得・総合課税(FAQ 2-12)、雑所得の損失は給与所得などと通算できません(FAQ 2-11)。つまり、清算で大きく負けても、その損失で給与の税金が戻ることはありません。資金調達率の受け払いの扱いはFAQに明記がないため、税理士に確認してください。取引履歴と資金調達履歴はハイパーリキッドの画面からCSVで保存できます。詳しくはDEX取引の税金ガイドへ。日本からの利用に関する規制の整理はハイパーリキッドの使い方(日本から使える?)にあります。本記事は税務・法務の助言ではありません。

14. チェックリスト

  1. 投機的なポジションは分離(Isolated)マージン。クロスは互いにヘッジになっているポジションだけに使う。
  2. レバレッジではなく損失額からサイズを決める。許容できる損失額と損切り位置を先に決め、そこからポジション量を計算する。
  3. 実効レバレッジ(建玉合計 ÷ 口座残高)は主要銘柄で3〜5倍以下、アルトはさらに低く。
  4. reduce-only の損切りを、清算価格までの距離の半分より手前に置く。
  5. 買い増し・一部決済・証拠金の移動のたびに清算価格を確認し直す。清算価格は動く。
  6. 持ち越す前に資金調達率を確認。基準の何倍にもなっている過熱銘柄は避ける。
  7. 清算マップで、建値と損切り位置の近くに大きな清算の塊がないか見る。
  8. ポジションの外に予備のUSDCを置き、追加入金で耐えられるようにする(クロスなら口座内に)。
  9. 重要指標の前後や、板が薄くなる週末は最大レバレッジを使わない。
  10. レバレッジをかけたままナンピンしない。するなら新しい清算価格を必ず計算し直す。

日次の損失上限や相関、トレード記録まで含めた全体の枠組みは無期限先物のリスク管理と清算を防ぐ方法、銘柄ごとの上限はハイパーリキッドのレバレッジ上限へ。

15. よくある質問

清算の連鎖(清算カスケード)とは何ですか?

価格の下落でレバレッジをかけたロングが維持証拠金を割り、取引所が成行で強制決済し、その売り注文がさらに価格を押し下げて次の層のロングを清算させる、という連鎖です(ショートなら上方向の踏み上げ)。2025年10月10日には暗号資産市場全体で約24時間に190億ドル超が清算され、ハイパーリキッドでは日本時間10月11日6時16分からの11分間で約21億ドルが清算されました。

「強制ロスカット」と「清算」は同じですか?

ほぼ同じ意味です。国内の取引所やFX会社では証拠金維持率が一定水準を下回ったときの強制決済を「ロスカット」と呼ぶことが多く、DEXの無期限先物では同じ仕組みを「清算(Liquidation)」と呼びます。ハイパーリキッドでは口座の評価額が維持証拠金(BTCで想定元本の1.25%)を下回ると清算が始まります。

ハイパーリキッドではどうやって清算されますか?

マーク価格で見た口座の評価額(分離マージンならそのポジションの証拠金)が維持証拠金を下回ると、ポジションの成行注文が板に送られます。10万USDCを超えるポジションは20%ずつ、30秒のクールダウンつきです。約定後に残った担保は本人に残り、清算手数料はありません。間に合わずに評価額が維持証拠金の3分の2を下回ると、HLPの清算用ボールトがポジションを引き取り、残りの証拠金は戻りません。

何%動いたら清算されますか?

分離マージンのロングなら、おおよそ(1 ÷ レバレッジ − 維持証拠金率)÷(1 − 維持証拠金率)です。BTC(維持証拠金1.25%)なら5倍で約19%、10倍で約8.9%、20倍で約3.8%、40倍で約1.3%の下落で清算されます。手数料や資金調達率、クロスマージンならほかのポジションの損失によって、清算価格はさらに近づきます。

クロスマージンと分離マージン、どちらが安全ですか?

連鎖を防ぐなら分離マージンです。分離は各ポジションの損失を入れた証拠金までに限定するので、1つの失敗がほかのポジションに波及しません。クロスは口座残高全体で支えるので1銘柄の急変には耐えやすい反面、崩れるときはすべてのクロスポジションが同時に清算され、バックストップ清算なら口座残高はゼロになります。

DEXで追証(追加証拠金の請求)はありますか?

ハイパーリキッドの公式ドキュメントには、口座がマイナスになったときに不足分を利用者へ請求する仕組みの記載はありません。マイナス分は自動デレバレッジ(ADL)で反対側の利益の出ているポジションを決済して埋め、取引所に不良債権が残らないようにしています。公式ドキュメントは「ポジションを持っていない利用者が損失を分担することはない」と明記しています。

損切り注文を置けば清算を防げますか?

清算価格より十分手前に置けば、ほとんどの場合は防げます。ハイパーリキッドのTP/SLはマーク価格で発動し、許容スリッページ10%の成行注文として執行されるため、急落時は発動価格より不利に約定することがあります。清算価格までの距離の半分程度に置くのが目安で、清算価格の直前に置いた損切りはほとんど役に立ちません。

清算による損失は税金でどう扱われますか?

清算で確定した損失も無期限先物の損益の一部で、暗号資産の証拠金取引は原則として雑所得・総合課税です(国税庁FAQ 令和7年12月版 2-12)。雑所得の損失は給与所得などほかの所得と通算できません(FAQ 2-11)。資金調達率の受け払いについてはFAQに明記がないため、扱いは税理士に確認してください。

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